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東京高等裁判所 昭和50年(ラ)494号 決定 1975年10月27日

抗告人 株式会社鈴三和

右代表者代表取締役 鈴木正吾

相手方 岩崎硝子株式会社

右代表者代表取締役 岩崎一夫

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。

本件記録によれば、相手方を債権者、抗告人を債務者とする横浜地方裁判所昭和四九年(ヨ)第六八三号有体動産仮処分申請事件について、相手方は、同裁判所の保証決定に基づき保証金二〇万円を供託して(供託番号横浜地方法務局昭和四九年(金)第七、六一三号)、同年七月二六日付の抗告人に対する仮処分決定を得たが、右仮処分事件は同年八月二日相手方の仮処分申請の取下により終了したこと、そこで同裁判所は、相手方の申立に基づき、同月五日抗告人に送達された催告書をもって抗告人に対し、右保証金につき同催告書到達の日から一〇日以内に担保権利者として権利の行使をなすべく、その権利を行使したときは右期間及びその後二日以内にその旨を同裁判所に申告すべき旨を催告したところ、抗告人は、同月一三日同裁判所に、「担保権利者としての権利行使」と題し「抗告人は右仮処分事件により莫大な信用上の損害を蒙ったので右担保金について権利を行使する」旨記載した相手方宛の書面を作成提出したにとどまったため、同裁判所は同月二二日付で、担保取消につき担保権利者たる抗告人の同意があったものとみなして担保取消決定をなしたこと、以上のように認めることができる。

そして、抗告人が原裁判所に提出した右書面からは、いまだ担保権利者たる抗告人が同裁判所の指定する期間内に裁判上被担保債権の確定をはかる手続を現実にとった事実を認めることができず、他にも右事実を認めるに足る資料の提出はないのであるから、原裁判所が担保取消につき抗告人が同意したものとみなして担保取消決定をなしたのは相当であって、右決定に違法があるとは認められない。

よって本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用を抗告人に負担させることとし主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 江尻美雄一 裁判官 滝田薫 桜井敏雄)

<以下省略>

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